感染症

感染症とは

 感染症(伝染病)は、生物にとって脅威の天敵です。人間に限らず、「生物」と呼ばれるすべての生き物に当てはまるもので、次から次へと染っていく。歴史が始まるいぜんから近代まで、人間の病気の大部分を占めてきたのが感染症です。1929年に「ペニシリン(最初の抗生物質)」が発明されるまで、根本的な治療法はなかっために、伝染病は台風や地震のような「大きな災害」と捉えられていたんです。

 最近100年ほどの現代は、微生物学・免疫学・薬理学・内科学・外科学・公衆衛生学が進歩しているので、感染症の診断・治療・予防を扱う感染症学も、かなり発展しています。先進国では、ほぼ感染症は抑えられたといってもいいでしょう。しかし、世界全体ではいまだに、感染症は未だに死因の約1/4を占めています。マラリア・結核・AIDS・腸管感染症は、発展途上国では社会問題となっています。感染症は、治療さえできれば済む問題で半ありません。衛生面を徹底しないと、発生する根元を断つことができないのです。よって、保健や開発などを広く捉えた対策が必要なんです。

 とはいっても、感染症の少ない日本では、現実味のないお話です。衛生について、ことのほか、やかましく規制されているおかげで、食物での壊滅的な感染症は起こりません。ときおり、集団食中毒のニュースがありますが、保健所の対応が早いために、感染源は即ざま封じ込められます。日本は、夏に湿度が高い気候風土。少しの油断が大きな感染源に発展しかねないという過去の歴経験から、厳しい規制と素早い処置手順が発達したのでしょう。

 感染は、衛生以外からも発生します。日本を含めた先進国では、新興感染症・再興感染症に加えて、多剤耐性菌の蔓延やバイオテロの脅威が課題となっています。また、高度医療の発達にともなって、手術後の患者や免疫抑制状態の患者における日和見感染も増加しています。このようにみていくと、日常的にもまだまだ完全な解決にはほど遠いようですね。

感染について
「感染とは」「感染症と法律」( wikipediaより )
微生物学的には生体に微生物が侵入・定着した状態をいう。臨床医学的には微生物が侵入して定着し発症するまでの一連の過程をいう。ここで示される「感染症」の「感染」は後者の意味合いが強い。
日本では、感染症に対応するための法律として、従来の「伝染病予防法」、「性病予防法」および「エイズ予防法」が廃止・統合され、1999年4月1日から「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」が施行されている。



感染の分類

 感染症が起こるには、3つの要素が絡み合う。それは、病原微生物・感染経路・感染宿主です。この3要素があって初めて感染症が成立するのです。感染症を起こすもとになる「病原微生物」があって、それがなんらかの「経路」から体に進入。進入された体内は微生物を撃退する行動をしますが、免疫細胞が弱っているか、微生物があまりにも強かったりすると感染症にかかるわけです。病原に触れたからといって、ただちに感染症になるわけではありません。防御機構は、3段階あります。まず、皮膚や粘膜での物理的なバリアが第一段階です。侵入した病原微生物に対して、攻撃する(非特異的な防御機構という)のが第二段階です。これには、補体・リゾチーム・ラクトフェリン等などの液性因子と、マクロファージ・好中球・NK細胞等の細胞性因子とがあります。 第2段階も突破した場合には、「免疫」というシステムが動き出します。さらなる攻撃と、次回への対策を兼ねて「敵」を認識するわけです。具体的には、B細胞の体液性免疫とT細胞による細胞性免疫が活動します。これを「特異的な防御機構」といいます。ちなみに、この防御システムのどれかが破綻して、感染しやすい状態の人間を「易感染性宿主」といいます。易感染性宿主が発症しやすいのが、日和見感染(健康な体であれば感染症を起こさないはずの病原体で発症する感染症のこと)です。

 感染の種類はさまざまです。よって、分類方法もさまざまです。感染の分類をみれば、感染の発生源やルートがよく分かります。

・伝染力からの分類
 「伝染病」とは、個体の感染症が同種の個体に次々と同じ感染症が広がっていきやすい病気のこと。伝搬性が高い感染症をいいます。「輸入感染症」とは、旅行者や輸入食品を介して病原体が海外から持ち込まれた感染症のことをいいます。もともと国内にはないタイプか、すでに絶滅種とされている感染症を起こすものです。重症急性呼吸器症候群・デング熱・黄熱病などがこれにあたります。一般には大きな感染力がないものです。「検疫伝染病」とは、輸入感染症のうち一度国内に進入すると流行する危険のあるものをいいます。検疫法によって検疫伝染病の指定されており、非常に危険視されています。コレラやペストが、これにあたります。

・種類感染様式からの分類
種類感染は、一般には、「内因感染」と「外因感染」に分けられています。内因感染とは、宿主の免疫力が低下したことによって、宿主の常在している微生物により症状を起こす場合をいいます。易感染宿主に起こる日和見感染感染症が代表的です。また、本来なら無菌状態である臓器内に、宿主に常在している微生物が進入して起こるケースを異所性感染といいます。外因感染とは、生体の外から進入した微生物によって感染が起こることです。

・病原微生物の種類による分類
寄生虫・細菌・真菌・ウイルス・異常プリオン等の病原体が、それぞれ特有の感染経路を介して生体に感染するもの。感染後は、増殖した病原体が好む身体部位に、特有のメカニズムで攻撃することにより感染症引き起こします。細菌感染症・真菌感染症・原虫感染症・寄生虫感染症・プリオン病などがあります。( 疲れたので詳細は省く )

鳥インフルエンザ

 鳥インフルエンザとは、鳥類の感染症です。A型インフルエンザウイルスが、鳥類に感染して起きるのが特徴となってます。

 鳥インフルエンザウイルスは、野生の水禽類(アヒルやカモなど)を自然の宿主として存在しています。水禽類の腸で増殖して、水中の糞を介して鳥同士が感染します。水禽類はただの宿主です。感染しても発症しません。しかし、ニワトリ・ウズラ・七面鳥等(家禽類といいます)に感染すると、非常に高い病原性を発揮するものがあるんです。それは「高病原性鳥インフルエンザ」と呼ばれています。世界的に養鶏産業の脅威となっているウイルスが「高病原性鳥インフルエンザ」です。長い名前なので「鳥インフルエンザ」としています。

 鳥インフルエンザのうち、さらに問題になるのが、「H5N1亜型ウイルス」。「H5N1亜型ウイルス」をもった鳥と接触した人間が、感染や発病したと報告されているのです。人間に感染すると、別の問題が起こります。ヒトインフルエンザウイルスと混じり合うと、「人間の間で猛烈に感染するウイルスが生まれる」と恐れられているのです。

 人間のインフルエンザのウイルスと、鳥インフルエンザのウイルスでは、感染対象となる動物(宿主)が異なります。そのため、鳥インフルエンザウイルスが人間に直接感染する能力は低いし、感染しても人間から人間への伝染は起こりにくい。一般的には、そのように考えられています。しかし、大量のウイルスとの接触や、宿主の体質などによっては、人間に感染するケースがあることは、すでに知られています。ヒトインフルエンザウイルスそのものが、水鳥の鳥インフルエンザウイルスの突然変異だと考えられています。そういうことから、鳥インフルエンザから新型インフルエンザが発生する危険性が0ではないのです。

 インフルエンザウイルスの中で、鳥類に感染するのはA型です。ヒトインフルエンザで、現在まで流行を繰り返してきたのは、A型とB型。人間には、B型・C型も感染します。インフルエンザは、それ以外にも、家畜のブタ・ウマ・ミンク、野生のアザラシ・クジラにも感染するようです。人間に感染するタイプのウイルスは、もともと水鳥起源のウイルスといわれます。それがブタに感染し、ブタの体内でウイルスが変異して人間にも感染するようになったという仮説があるのです。遺伝子(RNA)解読の裏付け研究がなされているところです。
 「種」の壁があるために、人間には人間の、鳥類には鳥のインフルエンザのみが感染すると見られてきましたが、ヒトに感染する「高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)」が現れてしまったのです。高病原性鳥インフルエンザの、人間への感染例は極めて少なく、鶏肉からの感染例は皆無。大方の人にとっては、気にする出来事ではないといえます。